『寝顔は天使か小悪魔か』



指先でつつくと、睫毛がぴくぴく揺れて、眉根がぎゅぎゅっと寄った。
(あー、寝苦しそう・・・。いい加減起きればいいのになぁ。)

“起きればいいな”と“起きて欲しい”はちょっとばかりニュアンスが違うと思う。

『起きて欲しい』は、起きてから用事があるみたいだけれど、『起きればいいな』は、たゆたう時間を楽しんでいる気がする。
そして、たぶん今日は後者だ。

「ごーろーくん」

小声で呼びかけると、寄せられた眉間の皺がふうっと緩んだ。

「うー、寿ぃ・・・」

(うわぁ、かなり嬉しいんだけど!!)

よし!!ここで、だめ押しだ!!

「すーきーだーよ」




(・・・えええ、なんでそこでまた険しい顔に・・・)

落ち込みかけた所で、たぶん必殺の一言を・・・。

「キャッチボールするー?」

全く、なんて顔をするんだよ・・・。
寝ているくせに、本当に寝ているか疑いたくなるよ。
そんなに幸せそうな顔をされたら、いつまでだって眺めていたくなる。

天使か小悪魔か、僕にとっては大差はないみたいだ。