『サラリと言わないで欲しい』



「一緒に来いよ」

なんて、そんなに簡単に。そんなにサラリと言わないで欲しい。
心の中とは裏腹に、口をついてでたのは、

「もちろんだよ、吾郎君!」

(・・・・・・あぁ、またOKしちゃったよ・・・。)


相変わらず不甲斐ない自分に歯がみしながら、僕はこれからの対策を急ピッチで練り始めた。

「おい!トシ!もう、行くぞ」
「ご、ごめん。すぐ用意するよ」

ばたばたと机の上の物を片付けて、ショルダーに詰め込む。慌てすぎて、今日もらったプリントに皺が寄る音がしたけど、気にしてる余裕なんてなかった。

教室の出口で、振り返る君に向かって走り出す。



本当に、そんなにサラリと言わないで欲しい。
いつだって君に振り回されている僕なのに、

―――ますます逃げられなくなってしまうから。