□□□クリスマスは勝負の日!!(*先生&生徒設定「先生の彼氏」より)□□□



けだるげに動かした腕が何もない空間をかく。
ようやくの思いで目蓋を押し上げると、隣にいるはずの寿也の姿が見えなかった。触れたシーツは、まだ彼の体温を覚えたままだから、そんなに時間は経っていないのだろう。

「ったく、どこ行ったんだよ」

時計の針を見ると、あと少しで日付は変わろうとしていた。


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「あ、先生。起きたんですか?」
ベッドの上に身を起こして、窓の外の闇を見つめていると寿也が戻って来た。少し湿った髪からは淡い香りがする。そして手元には、二つのマグカップ。その片方を吾郎に差し出すと、寿也も自分の分を持ったままベッドに腰掛けた。

「結局、今日もお前に淹れてもらっちまったな・・・」
芳ばしい匂いのする湯気が全身にゆきわたる頃には、溶けかけた神経も目を醒まし始める。

「いいですよ、別に」
「俺が良くねぇんだよ・・・」

ぶすっと膨れた横顔は、我ながら大人げないとは思ったが。だいたい二人きりの時は、寿也も吾郎の事を敬う様子を見せないのだから今更だろう。
案の定、呆れるというよりも楽しげな表情が寿也の頬に浮かんでいた。

「じゃあ代わりに、これでももらいますよ」
「あ・・・・・・」

(また、このパターンかよ。いい加減、他の誘い方くらい覚えろよな)

でもそうなった場合は、今より更に自分は寿也にかなわなくなるだろう。
なにしろ誘い方云々はともかく、彼の眼も、手も、声も。寿也の存在そのものに、自分は溺れきっているのだ。

――それだけは、絶対に告白してやるつもりはないけれど。

「こんな時に、何考えてるんですか?」
重なった唇の隙間、息を継ぐ僅かな時間に、機嫌の悪そうな囁きが挟まれた。まずいと思った瞬間に、口づけはより深いそれへと移行している。

「なんで・・・も、ね、ん!」
(答えを聞く気がないのなら、最初っから言うなよ!)

熱く絡まる舌が歯列を割り、口腔を侵し、吾郎の感覚を狂わせてゆく。

「・・・ああ、もうすぐ日が変わりますね」
「んっ!・・・ん、ん!」

こんな時でも余裕をかますこの子供が、高校生だなんて世の中は理不尽過ぎる。こいつには、当分勝てる気がしない。教師の威厳を保てるのもいつまでだろうか。
ぼんやりと霞が掛かり始めた視界で、最後に映った窓ガラスには白い物がちらついていた。

(あれは・・・、あ、れは・・・)

「雪ですよ、先生・・・」
もう、見えていないかな?寿也の声が微かに聞こえた気はしたが、全身に回り始めた熱がすぐに世界を覆い始める。外の闇は深いけれど、ここは暖かい。

「と・・・しや・・・」

大好きな綺麗な笑顔が見える気がして、珍しく下の名前で呼んでやれば。

「メリークリスマス、・・・吾郎先生」


(ああ、やっぱりかなわねぇなぁ・・・)