クリスマスの準備って楽しいよね。(*先生&生徒設定「先生の彼氏」より)
「あー、なんで年末って、こう忙しいんだよ!!」
学校から持ち帰った書類の束が机の上に山のようになっている。教師の仕事は、その殆どの時間が生徒と紙に向かって費やされるし、持ち帰りも日常茶飯事だ。
崩壊を起こす寸前の塔に額を預けて溜め息をついたところで、ふわりとコーヒーの芳ばしい香りが漂ってきた。
「はい。先生、コーヒー淹れましたよ」
「お!さんきゅう〜、佐藤!!」
生き返るぜ〜と、いそいそ口に付けた褐色の液体は大ぶりのマグカップの中で、たぷんと揺れる。
吾郎がコーヒーが好きだと知ってから。寿也は専門の店で豆を購入し、淹れる度に丁寧にミルで挽くようになった。そんな豆を挽く動作も、淹れたてのコーヒーをカップに注ぐ姿も、全部が様になって見えるのは惚れた欲目なのだろうか。
「お前さぁ、今のバイトやめて喫茶店とか勤めてもうまくいきそうだよな」
ぽろりと零れた言葉に戻ってきた反応は、吾郎の予想外のものだった。
「んー、まぁ、やめても良いんですけどね。バーテンのバイトは」
「え!!お前本気で言ってるのか!?」
「冗談言ってるつもりはないですよ」
先生の言うように、喫茶店に勤めるかは別ですけどね。と付け加えられたところで、あんぐりとあいた吾郎の口が閉じられるわけはない。
「・・・・・・口、開いてますよ」
「いや、お前が人の話聞くなんて思わなかったから・・・」
そうだ、もっと高校生らしいバイト探そうぜ!等と12月の高校3年生への指導とは程遠い事を叫びながら、吾郎は思わず笑顔で寿也に抱きついた。
その結果、寿也から幾分冷めた視線を向けられても、吾郎は初めて感じる教師としての実感に酔いしれて、近づく危機に気づくことが遅れてしまったのである。
「そんな可愛い顔晒してるなんて、僕に襲って欲しいんですか?」
「え・・・?あ・・・?佐・・・と」
抱きついていた腕を外そうとした時はすでに遅く、逆に腰を引き寄せてくる寿也の腕から逃れることが難しい状態になっていた。
「お、俺、仕事まだ残ってんだけど・・・」
最後の頼みの綱とばかりに、机の上からこぼれ落ちそうな書類に目線を送ってみたが、当然というか効果はない。
「コーヒー、飲みかけだし、冷めちまうよ・・・」
「後で、ゆっくり好きなだけ淹れてあげますから」
唇が重なる直前に呟いた言葉も、ほろ苦い味のするキスに、丸ごと綺麗に飲み込まれてしまった。
***
「で、なんでお前さぁ。急に『バーテンやめても良い』なんて言い出したわけ?」
「ああ、それですか。」
「どうせ、俺が言ったからじゃないんだろ」
「もうすぐクリスマスが近いでしょ?」
「は?クリスマスがどう関係あるんだ?」
「クリスマスって、ああいう所でも掻き入れ時なんですよ。今までも毎年シフトが入ってましたから」
「今年くらいは、僕だって好きな人と過ごしたいですからね。先生。」
今年一番の口説き文句を囁かれて、吾郎はたまらず冷めたコーヒーを一息に煽った。
「そんな冷めたの飲まなくても、また淹れますよ」
「いいんだよ、別に」
勢いよく飲み過ぎて、少しむせた背中を寿也の呆れた声が撫でてくれる。
「クリスマスには俺がコーヒー淹れてやるよ。」
クリスマスがこんなに待ち遠しいのは久しぶりだ。それは、教師にとっても生徒にとっても共通している。
いつの間にか、この関係はこんなにも居心地が良くなっていた。
「あー、なんで年末って、こう忙しいんだよ!!」
学校から持ち帰った書類の束が机の上に山のようになっている。教師の仕事は、その殆どの時間が生徒と紙に向かって費やされるし、持ち帰りも日常茶飯事だ。
崩壊を起こす寸前の塔に額を預けて溜め息をついたところで、ふわりとコーヒーの芳ばしい香りが漂ってきた。
「はい。先生、コーヒー淹れましたよ」
「お!さんきゅう〜、佐藤!!」
生き返るぜ〜と、いそいそ口に付けた褐色の液体は大ぶりのマグカップの中で、たぷんと揺れる。
吾郎がコーヒーが好きだと知ってから。寿也は専門の店で豆を購入し、淹れる度に丁寧にミルで挽くようになった。そんな豆を挽く動作も、淹れたてのコーヒーをカップに注ぐ姿も、全部が様になって見えるのは惚れた欲目なのだろうか。
「お前さぁ、今のバイトやめて喫茶店とか勤めてもうまくいきそうだよな」
ぽろりと零れた言葉に戻ってきた反応は、吾郎の予想外のものだった。
「んー、まぁ、やめても良いんですけどね。バーテンのバイトは」
「え!!お前本気で言ってるのか!?」
「冗談言ってるつもりはないですよ」
先生の言うように、喫茶店に勤めるかは別ですけどね。と付け加えられたところで、あんぐりとあいた吾郎の口が閉じられるわけはない。
「・・・・・・口、開いてますよ」
「いや、お前が人の話聞くなんて思わなかったから・・・」
そうだ、もっと高校生らしいバイト探そうぜ!等と12月の高校3年生への指導とは程遠い事を叫びながら、吾郎は思わず笑顔で寿也に抱きついた。
その結果、寿也から幾分冷めた視線を向けられても、吾郎は初めて感じる教師としての実感に酔いしれて、近づく危機に気づくことが遅れてしまったのである。
「そんな可愛い顔晒してるなんて、僕に襲って欲しいんですか?」
「え・・・?あ・・・?佐・・・と」
抱きついていた腕を外そうとした時はすでに遅く、逆に腰を引き寄せてくる寿也の腕から逃れることが難しい状態になっていた。
「お、俺、仕事まだ残ってんだけど・・・」
最後の頼みの綱とばかりに、机の上からこぼれ落ちそうな書類に目線を送ってみたが、当然というか効果はない。
「コーヒー、飲みかけだし、冷めちまうよ・・・」
「後で、ゆっくり好きなだけ淹れてあげますから」
唇が重なる直前に呟いた言葉も、ほろ苦い味のするキスに、丸ごと綺麗に飲み込まれてしまった。
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「で、なんでお前さぁ。急に『バーテンやめても良い』なんて言い出したわけ?」
「ああ、それですか。」
「どうせ、俺が言ったからじゃないんだろ」
「もうすぐクリスマスが近いでしょ?」
「は?クリスマスがどう関係あるんだ?」
「クリスマスって、ああいう所でも掻き入れ時なんですよ。今までも毎年シフトが入ってましたから」
「今年くらいは、僕だって好きな人と過ごしたいですからね。先生。」
今年一番の口説き文句を囁かれて、吾郎はたまらず冷めたコーヒーを一息に煽った。
「そんな冷めたの飲まなくても、また淹れますよ」
「いいんだよ、別に」
勢いよく飲み過ぎて、少しむせた背中を寿也の呆れた声が撫でてくれる。
「クリスマスには俺がコーヒー淹れてやるよ。」
クリスマスがこんなに待ち遠しいのは久しぶりだ。それは、教師にとっても生徒にとっても共通している。
いつの間にか、この関係はこんなにも居心地が良くなっていた。