TAKE IT EASY!


 



*これから始まるお話は、ゲンミツにパラレルです。『剣と魔法のふぁんたじー』です。劇中劇なんかじゃなくて、本気のパラレル(笑)なので、苦手な方はすみません!
*アベミハのはずなのが、若干(?)他の面子が出張っていてラブ要素が薄目かもしれません。
*詳細設定が見切り発進なので、細かい矛盾には目を瞑ってください。こんな設定素敵!とかあればコメント頂けると嬉しいです(実現出来るかは不明)。
*ちなみに、簡単な事前知識として花井と田島と栄口はRPG風にいうと同じパーティーです。阿部と三橋はまた別のコンビです。
*最近読んだ最後のファンタジーがグイン○ーガで、最後のRPGがFF12なんですが、両方ともさして参考になってるとは思えません。
*基本的に100%捏造です。
*名前がカタカナなのは仕様です。読みづらいOR本人が面倒くさくなったら漢字に戻します。
*では、しつこい前書きにお付き合い下さって本当にありがとうございました!




















□□□TAKE IT EASY!






木漏れ日と共に、爽やかな小鳥の鳴き声が降ってくる。ほんのりと甘さを含んでいるような風が心地よくて、ハナイの足取りは自然とゆったりしたものになった。
「なぁ、ハナイ。次の街ってどこだっけ?」
少し先を歩いていたタジマが此方を振り返って尋ねてくる。鎧を覆う竜鱗(ドラゴンスケイル)の表面で、蒼い光が弾けた。
「ああ、次はニシウラだよ」
「へーっ、ニシウラか。久しぶりだなぁ」
隣を歩くサカエグチの言葉に、タジマの顔が満面の笑みに変わった。そういえば、そんな久しぶりになるかな。と考え始めたハナイにサカエグチが「2ヶ月ぶりだよ」と応じる。
「今回の依頼は結構時間かかったな」
「まぁ、その分報酬金額は大きいけどね」
「でも、これでしばらくはゆっくり出来るな」
久々の休暇と報酬をどう使おうか、嬉しい悩みでハナイもサカエグチも口元が綻んでいる。
―――だが、若干一名は違う意見を持っていたらしい。
「えーっ、そんなの詰まんねーよ。すぐに、なんか次の仕事探そうぜ!」
そのうえ、今度はもっと強いモンスターがいっぱい出てくる依頼がいい。と騒ぐタジマに、ハナイは「・・・ほどほどにしとこう、な」と言うのが精一杯だった。








そんな風に3人が森の出口にさしかかった頃、遠くから風に紛れて微かな金属音が聞こえた。じわりと肌を刺す独特の雰囲気。ハナイが流れてくるそれを剣戟の音だと判断すると同時に。
「おい・・・」
「ああ、誰か戦ってるな。」
タジマの顔からさっきまでの巫山戯た表情は綺麗にぬぐい去られ、鋭い目付きは遙か先の戦場を見つめている。その横顔を見て、流石にタジマは一流の剣士だ。とハナイは密かに感嘆した。僅かな音を耳にしただけでタジマの頭の中はすでに戦闘用に切り替えられている。
「そういえば、ここら辺。最近盗賊の類が出るって前の街で聞いたような」
気がするなぁ。と言ったサカエグチの顔も常と変わらず穏やかだったが、纏う雰囲気はタジマと同様に隙の無いものになっている。
「どうする?」
こうなったら、聞くだけ愚問かもしれない。と思いつつも、ハナイは念のために2人の意見を聞いてみる事にした。(3人で仕事してるので、意見の調整は必須事項である。)
「どうするって、なぁ?」
「俺はどっちでもいいよ」
「んな事言ったって、お前等行く気満々だろ・・・」
「俺達じゃなくて、タジマだけ、だけどね」
そんな他人事のように話す温厚篤実な僧侶こそが、戦闘に入れば一番容赦無いなんて、さぞかし神様もびっくりするだろう。どうやらこの分だと、多数決で参戦決定らしい。
久々の休暇の前に増えた一仕事に「仕方ねぇな」と、ハナイはこっそりと溜め息をつく。言い出したら聞かない仲間を持つと、こういう時に苦労する。まぁ、それを差し引いても気苦労が絶えた事は無いのだが。
「あ、やばい」
―――だが、前を歩くタジマの表情が急に曇った。
「なんだよ、そんなにヤバそう・・・」
なら、やめておくか?と問いかけるハナイの声を終わりまで聞かず、タジマは走り出していた。
「早く行かないと、もうすぐ終わっちまいそう!」
「はぁ!?」
「だから、もう片方がやられまくってんの!俺がやる分無くなっちゃうよ!!」
何故、こんな遠くからそこまで分かるのか、なんて常識がタジマに通用しないのは分かっている。だが、
「ここまで人間離れしてるっていうのもな・・・」
と呟いてしまう己を、ハナイは改めて普通の人間だと感じていた。
「どっちがやられてるにしても、面倒な事になりそうだったら避けたいんだけど。まぁ、もうすぐ街だし、この3人なら簡単にやられるわけも無いからいいけどね」
「・・・おい、サカエグチ。お前、今の発言本気なんだよな・・・」
特に前半。人としてどうかと思う、けど、はっきり言えない自分にハナイはまた溜め息をつく。
「そうかな?」
「まぁ、いいけど・・・」
何にせよ。破天荒な面はあるが一流の剣士であるタジマと、見た目の温厚さからすると驚くほど現実的な一面も併せ持ったサカエグチ、そしてハナイの3人が、非常にバランスのとれたパーティーである事は間違い無いのだ。多少の難など指摘するべくもない。






『ハーナーイー、サカエグーチー、はーやーくー!!』






風に乗って呼ぶ声が聞こえる。足の速いタジマの姿は、木々の間でもう小指の先ほどの大きさしか見えず、呼ばれた2人は慌ててその背中を追いかけた。
「サカエグチ。今日は、ほどほどにやっとこうな」
「そこのとこは、ハナイに同感」
でも、タジマがどうするかは分からないけど。と付け加えられて、ハナイは思わず「同感」と応じそびれてしまった。














「タジマ、大丈夫か?」
「あ、ハナイ、サカエグチ。もう全部終わっちゃったよ」
「あ、そう・・・」
ほっとしたような、少し残念なような気分は、自分も些かこの仲間に毒されているのかも知れない。
「結構、たくさんいたんだね」
感心したようなサカエグチの言葉に地面に目をやると、10人は下らないと思われる男達が気を失って転がっていた。
「そいつ等みんな盗賊なんだってさ」
俺も1人くらいやっときたかったな。と口をとがらす問題児に、ハナイは苦笑を零す。
「別に、無理に戦う必要も無いだろ」
「でもさぁ。せっかく全速力で走ったのに無駄っていうのは、ゲンミツに納得出来ない」
「タジマは相変わらずだね」
「な、サカエグチだってそう思うだろ?」
俺は遠慮しとくよ。僧侶のやんわりとした笑みに勢いを削がれたのか、タジマも仕方ないな、と呟いて剣を腰に戻した。
「で、此奴らやった奴って・・・」












「俺達に何か用か?」
ゆらりと黒い影が揺れた、とハナイに見えたのは言葉を発した人物が、黒い装備で身を固めていたからだ。そのうえ黒い髪、黒い瞳、頭の先から足の先まで黒ずくめなんて、随分ご丁寧なもんだ。口にしたわけでは無かったが、『黒い男』の目付きがすっ、と剣呑な物に変わる。刺すような視線は、此方を値踏みするというよりも、喧嘩を売っていると表現するのが相応しいくらいだ。
「いや、特に用は無いが・・・。何か必要な物があれば、俺達が提供出来るかと・・・」
「―――無い」
あまりにもきっぱり、且つぞんざいな物言いに流石のハナイも鼻白んだ。こんな奴助けなくて良かった。(助けなくても支障は無かったのだが、そこの部分はこの際問題では無い)
「あ、れ?もしかして、アベ?」
だが、唐突なサカエグチの言葉に目を見張ったのは、相手も同じだったらしい。
「はぁ?・・・お前―――サカエグチか?」
「ああ、久しぶり。前にニシウラで会って以来だよな」
「まあな・・・」
『アベ』と呼ばれた男は、この時になって漸く手にしていた剣を鞘に収めた。幾分和らいだように見える目元に、ハナイも僅かに緊張が弛む。
―――この男と戦うハメにならなくて良かった。
転がっている連中には申し訳ないが、一見で『アベ』が相当な剣士である事は明らかだ。仮に敵に回れば―――負ける、とは思わないが、勝てる確率も低いだろう。それにしても『アベ』とサカエグチが知り合いだったなんて、運が良かったな。ハナイはとりあえず(自分にとっては)数少ない幸運に感謝する事にした。
「コイツ。サカエグチの知り合いだったんだ?」
「ああ、ニシウラから少し南に下った所に『トダキタ』って村があるだろ。俺もアベもそこの出身」
「そうか、同郷なのか」
タジマとの会話に頷きながらもう一度アベの方に目を向けると、いつの間にか彼の隣に寄り添うようにしてもう1人が立っていた。








「あ、アベくん・・・」
黒と対照的な琥珀色の瞳。アベよりも少し小柄な身体は、それでも彼と同じ職業の証である長剣を帯びている。細い体躯に合わせたのか、それは一般的に出回っている剣よりも僅かに短く軽そうに見えた。
「ミハシ、どうした、さっきの戦闘で何処か痛めたか!?」
呼びかけに振り向いたアベは、眉間に皺を寄せながら『ミハシ』の腕を掴んで引き寄せる。薄手の銀鎧に覆われていない部分を検分するような視線に、痩身が藻掻いたところで離すつもりはないらしい。
「い、いや、け、怪我はもう治療してもらったし・・・」
「そうか・・・」
「アベ・・・?」
漸く安堵の息をついたアベが手を離したところで、サカエグチが近寄っていく。興味津々、といった顔に、アベの眉間に明かな皺が寄った。尤も、お互い馴染みらしいから、それくらい慣れたものなのだろう。
「なぁ、アベ、そっちの彼は誰なのかな?」
「あ、ああ・・・」
大して気にした風も無いサカエグチから被せるように聞かれて、歯切れの悪いアベの後ろから、柔らかそうな栗色の頭がふわふわと揺れた。黒い影の脇から、ぴょこんと顔が覗く。
「初めまし、て!お、オレ、み、み、み、ミハシっていいます」
「あ、ど、ど、どうも」
ぶん、と音がしそうな勢いで頭を下げられたので、ハナイ達も、つい、釣られるように頭を下げてしまう。
再び3人が顔を上げると、そこには、はにかんだ笑顔が待っていた。


「アベくんと一緒に、仕事してま、す。よ、宜しく御願い、します!」


「あ、はぁ・・・」


しかし、その肩越しに見えたアベの顔が、思い切り特大の苦虫を噛み潰したよう見える、のは己の見間違えではないだろうな―――悲しい事にトラブルの気配に対する勘だけは今まで外れた試しがないハナイは、こっそりと溜め息をついていた。
















森の出口から街までは、緩やかな一本道だ。なだらかな丘陵の向こうに、建造物の影がぼんやり薄墨色に浮かんで見える。
「へーっ、アベもニシウラに向かってる途中だったんだ」
「ああ、あそこがここらでは一番栄えているからな」
「へぇ」
タジマの遠慮無い態度をさして気にしないようで良かった。横目でアベの様子を確認しながら、ハナイはミハシに話かけた。
「それにしてもアベもミハシも剣士だなんて、自信あるんだな」
パーティーを組む場合、戦闘に長けた剣士を中心に組むのは基本だが、通常は回復魔法を使える僧侶も同行させるのが常識ともいえた。普通に考えれば剣士のみの組では回復はアイテムだけに頼らざるを得ない。それは、あまり効率的とも言えず、その点からハナイは、アベとミハシが双方腕に自信のある剣士なのだ、と判断したのだ。が、
「そ、んな事ない、よ!オレ、ま、まだ怪我ばっかりしてる、し・・・」
ハナイの言葉にふるふると首を振ったミハシは、嘘をついているようには見えない。無礼を承知で評価すれば、本人の言う通り、体格、雰囲気からしてミハシをアベと同等の剣士と見なすのは無理だろう。
「じゃあ、回復はどうして・・・」
ハナイが尋ねた動機は、単純に好奇心からだった。いくつもの依頼を無事にこなす為には経験が一番だから、こうして情報を仕入れるのも『経験』に相当すると言える。そんなに大量のアイテムを抱えているように見えないミハシの軽装には、何か特別な秘訣でもあるのだろうか。
「―――回復は、俺がやってんの」
だが、ミハシが答えるのより先に、アベが二人の会話に割り込んでくる。
「はぁ?だってアベって、剣士だろ?」
「剣士が法術使って悪いか?」
「いや・・・でも・・・」
再び剣呑な目付きに制されてハナイは口ごもった。
確かにアベの言う通り、剣士の中には多少の術を使えるものはいる。ハナイ自身も強力、とまではいかないが多少の魔術は扱える。しかし、大抵の場合、剣士が使用するのは攻撃を主とした魔術の方で、回復や防御を目的とする法術を使う剣士には今まで出会った事が無かった。
「俺が回復使えないと、誰がコイツを治してやるんだよ」
それにしても当たり前の事を聞くな、といった風なアベ。
「あ、ああ・・・まぁ、理屈ではそうなるのか、な」
同意を求めようと振り返れば、サカエグチはあんぐりと口を開けている。呆気にとられた顔は、彼が受けた衝撃の大きさを物語っていた。だが、そんな瑣末な事など、アベは欠片も気にした様子を見せず話を続けた。
「―――コイツ。コイツってミハシの事だけど、すぐこけるし、馬鹿の一つ覚えで突撃ばっかだし、薬草なんて幾らあっても足りないからな。俺が法術覚えて治してやるのが一番手っ取り早いんだ」
「う、ひっ!」
「へ、へぇ・・・そうなんだ」
アベに何か言われる度に身を竦めるミハシより




―――どっちかっつーと、貴方のその自慢げな顔が気になります・・・。




とはハナイの心の中の声である。
『アベってさ、面倒くさそうに言ってる割に顔は嬉しそうな気ぃすんだけど』
だから、こそりと耳打ちするタジマに、ハナイもつい頷いてしまったのだ。だが、頷きついでにハナイが、アベってちょっと変わった奴なんだな。とサカエグチに話を振ってみたところ、






『昔は・・・あんな奴じゃなかったんだけど・・・』






と少しばかり遠い目をされた理由は―――また別の話だったりする。









END OR TO BE CONTINUED?






言い訳めいた

せっかくリクを頂いたのに、なんだかご希望の半分もクリアしてないこのテイタラク!うわあぁぁん、そ、そのうちリベンジ出来たらさせて下さい。久々に制約無しで書いていたら、ものっそ楽しかったです!で、・・・でも、こんなんアベミハじゃない(涙)!! そこのとこが一番すみませんでしたーーっ!